「かつどんくん」ってなに? | |
簡易飼料計算表「かつどんくんCP」は繁殖雌牛の飼料計算のためのソフトです。 コーハイ君と同じく、岐阜県農業大学校の中島敏明先生の製作です。 繁殖雌牛には、 @雌牛自身の維持のため、A胎子の成長のため、B授乳のため、 の3種類の栄養が必要です。 そして栄養は、炭水化物、タンパク質、ビタミンなどのミネラル類からなりますが、とくに牛では飼料中の粗タンパク質(CP)と、炭水化物にタンパク質を加えた総エネルギー(TDN)をもとに、飼料設計が行われています(もちろんミネラルも非常に大事ですよ!)。 日本飼養標準・肉用牛2008年版によると、 @雌牛自身の維持のための栄養は →体重450kgの場合、1日にCP479g、TDN3020gです。 A胎子の成長のための栄養は →妊娠末期2ヵ月の場合、@の維持飼料+1日にCP212g、TDN830gです。 B授乳のための栄養は →乳1kgつくるのに、CP97g、TDN360gです。 @については、雌牛の体重が増えるとそれに比例してCPもTDNも増加します。 ですが!その比率、つまり炭水化物とタンパク質のバランスは変わりません。 このバランス(栄養比)は「NR」といって、計算式(TDN−CP)÷CPで求められます。 @の場合、(3020−479)÷479=5.3です。 体重が増えても比率は変わりませんから、1のNRは5(5.3〜5.4)で一定です。 これを言い換えると、@の場合NR5、つまり「炭水化物:タンパク質=5:1」という比率の飼料給与が推奨されていると言うことです。 同じように、AとBについても見ていくと、 Aは、(830−212)÷212=2.9、 Bは、(360−97)÷97=2.7、です。 どちらも概ね「炭水化物:タンパク質=3:1」で、@に比べてタンパク質が多めに必要だと言う事が分かります。 さてそこで「かつどんくん」の登場です! かつどん、それはご飯とトンカツ、すなわち「炭水化物」と「タンパク質」です。そのバランスを簡単に計算できるソフトだから「かつどんくん」というわけです。 かつどんくんでは、NRが5以上(炭水化物が多い)の飼料を「ごはん型」、4未満(タンパク質が多い)の飼料を「とんかつ型」、4〜5の飼料はバランスが良く単味で給与できるので「定食型」と表現しています。 では、まずソフトをダウンロードしてください。無料ですのでご心配なく。 それからソフトを開きながら、使い方をご覧下さい。 ※上記数値は日本飼養標準・肉用牛2008年版のものです。 ソフトは2023年7月27日のバージョンアップで 2022年版の数値に改訂されています。 修正例 分娩される子牛の平均体重が30kgから35kgになったことに伴い、 分娩前2か月の要求量がCP212→238g TDN0.83→0.98kgにアップされたため、 それに併せて「かつどんくん」を修正(配合飼料1.2→1.4kg増加) |
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ダウンロード | |
下のボタンを押すと、かつどんくんをダウンロードできます。 「かつどんくん」をダウンロード! (50KB) マイクロソフト社の「エクセル」で製作されているため、使用するには「エクセル2000」以上のバージョンのソフトが必要です。 「かつどんくん」はフリーウェアですので、どなたでも自由に無料でご利用いただけます。 |
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「かつどんくん」の使い方 | |
かつどんくんの基本情報 | |
これが「かつどんくん」のメイン画面です。 皆さんの手で変更できる部分は、ステップ1とステップ3の飼料名とCP・TDNの数値です(赤い○で囲まれている部分です!)。 ここに皆さんが計算したい飼料の名前と、飼料標準に即したCP・TDNを入力する事で、あらかじめ設定したNR(表の上、濃い黄色で塗りつぶされた部分です。ここの数字も変更できます)に従った飼料の混合量が、青い○の部分に表示されるというわけですね。 |
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でも入力するって言っても飼養標準持ってないし、CP・TDNなんて分からないし、それがごはんかトンカツかなんてますますわからないよ!という方もご安心を。 画面下の「飼料成分データ」というタブをクリックしてください。画面が切り替わります。 |
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これは、繁殖雌牛への給与が想定される飼料の名前とCP・TDN、さらにそれが「ごはん型」「とんかつ型」「定食型」のどれに当たるかまとめた一覧表です! この表を見ながら(プリントしておくといいかも知れませんね!)、自分の使っている、あるいは使いたい飼料の名前、CP、TDNをメイン画面に入力するだけ。どうです簡単でしょう? 最初の画面に戻るときは、画面下の「計算表」のタブをクリックしてください。 |
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かつどんくんの数値の見方・ステップ1を参考に | |
おっといけない、肝心の「かつどんくん」の数値の読みとり方の説明がまだでしたね。 では「ステップ1 維持に要する飼料の組み合わせ表」を使ってご説明します。 この表で調べる飼料バランスは、最初に雌牛の栄養としてあげた3つのうち「@雌牛自身の維持のための栄養」のことです。 ですから、炭水化物とタンパク質の比は5:1、つまりNR5、画面の赤○のところが5となっていますね。このNRに即したバランスの飼料を与えたいわけです。 青○で囲った定食型飼料は、それだけでこのバランスを満たしているので、単味で給与できます。だから混合比を計算する必要はありません。 問題は、緑○で囲ったごはん型飼料と、オレンジ○で囲ったとんかつ型飼料です。 単味ではNRのバランスが悪いこれらの飼料を、どう混合すればNR5になるのか、それを計算するのが「かつどんくん」なのです! |
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計算結果は赤○内の数値です。例えば「いなわら」と「ヘイキューブ」の組み合わせでNR5にするためには、「いなわら」1kgに対し、「ヘイキューブ」0.242kgを混合するということです。 でもこれは、ごはん型飼料1kgに何kgのとんかつ型飼料を混ぜるかという計算結果なので、実際の給与量ではありません。そこで注目して欲しいのが青○の「満腹率」という数字です。 |
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赤○の部分に、雌牛の体重当たりに必要な満腹率の一覧表があります。 これを使って、体重にあわせた実際の給与量を計算するわけですね。 ここは手計算で、皆さんに電卓を使ってやって頂きます! 例えば500kgの雌牛で見ると、必要な満腹率は110%です。 そこで、計算結果の16.5%を何倍すると110%になるかを求めます。 110÷16.5=6.6 ですね。 つまり、先ほどの「いなわら」1kgと「ヘイキューブ」0.242kgをそれぞれ6.6倍した量(いなわら6.6kg、ヘイキューブ約1.6kg)が、500kgの雌牛に1日当たり与えるNR5の飼料の量ということになります。 簡単でしょ? 定食型の単味飼料の場合も考え方は同じです。青○の部分の満腹率を使って、体重相当の倍率を掛ければ、1日の給与量が求められます。 |
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応用的な使い方として、例えばいなわらとヘイキューブで満腹率70%を満たし、飼料イネとふすまで残り40%を満たす、といった計算もできます。 いなわらとヘイキューブは70÷16.5で「4.2倍」 飼料イネとふすまは40÷13.2で「3倍」 →「いなわら4.2kg、ヘイキューブ1.0kg(0.242×4.2)、飼料イネ3kg、ふすま0.8kg(0.279×3)」 さらに、ちょっと複雑ですが 「500kgの雌がいて、いなわら5kgは必ず使う。あと飼料イネとヘイキューブを使えるが、それぞれ何kg使えばNR5になるだろうか?」 といった算数の問題みたいな計算もできます。 まず5kgのいなわらにNR5の比率でヘイキューブを混合すると、5×0.242=1.2kg。 これで満たされる満腹率は5×16.5=82.5%なので、残り17.5%を満たすように飼料イネとヘイキューブの量を計算すると答えが出ます。 17.5÷11.1=1.6ですから、飼料イネ1.6kg、ヘイキューブ0.4kgです。 まとめると、いなわら5kg、飼料イネ1.6kg、ヘイキューブ1.6kgですね。 本当に算数みたいになっているので、他のステップの説明に移りましょう。 |
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ステップ3とステップ2と指導表の使い方 | |
ステップ2を飛ばして、先に「ステップ3 授乳中に加えるお乳の飼料組み合わせ表」を説明します。 これは冒頭の「B授乳のための栄養」を計算するシートです。 使い方、考え方はステップ1と同じです。 違いは、NRが5ではなく3.4(2000年の飼養標準の値に従っています)になっていること、それから満腹率が産乳量に変わっています。 |
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計算方法は満腹率の時と同じです。 赤○の授乳量の表をベースに、NR3.4の比率のチモシーとヘイキューブで分娩後1ヵ月の授乳量を満たすには、7÷3.03=2.3で、チモシー2.3kg、ヘイキューブ2.8kgと求められます。 ただステップ3で気を付けて欲しいのはごはん型と定食型に入っている配合飼料の扱いです。 授乳量の数値を満たすだけなら、分娩後1ヵ月は配合飼料3.5kgを与えればすむのですが、子牛が産まれた直後の雌牛に急に配合を多量に与えると、乳質が悪化して子牛の下痢が起こる場合があります。ご注意下さい。 |
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「ステップ2 妊娠末期に加える胎子の飼料」は冒頭の「A胎子の成長のための栄養」のことです。 これにはCPとTDNを満たすだけでなく、ビタミンやミネラル、カルシウムが豊富に必要なので、計算は抜きにして、条件を満たす飼料とその給与量を一覧にしました。 ご参考になさってください。 |
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このようにして、@〜Bまでの自農場の飼料プランを決定したら、画面下、赤○のタブをクリックすると出てくる指導表をプリントし、記入しておくと一目で確認する事ができます。 記入の仕方は農業大学校の例を参考にしてください。 |
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お問い合わせ | |
以上がかつどんくんの使用方法です。そのほか、使用方法などについてご不明な点がございましたら、中島敏明氏に直接メールでおたずね下さい。 【かつどんくんの使用方法、内容についてはこちらにお問い合わせ下さい】 中島敏明氏 メールアドレス t-nakashima@ccn.aitai.ne.jp 【ファイルのダウンロードに関するお問い合わせは肉牛新報社にどうぞ】 肉牛新報社 編集部 nikugyu@nikugyu.co.jp |
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使用上の注意 | |
@ NRの計算は、正確にはCPでなくDCP(可消化粗タンパク質)を用いますが、配合飼料の表示にはDCPが出ていないため、CPを使用しています。 A かつどんくんでは各飼料のCPとTDNを利用者自ら入力する必要があります。誤った数値を入力しても計算結果が出るため、間違いに気づかないまま使用を続けるおそれがあります。数値入力の際には誤りがないか十分にご確認下さい。 B お手持ちの配合飼料のCPとTDNを入力して使用する場合は、飼料袋の「粗タンパク質」(CP)と「可消化養分総量」(TDN)の%の値を10倍し、かつどんくんに入力してください。 C かつどんくんは一般的なエクセルファイルですので、使用中にパソコン等にトラブルがあったとしても製作者および当社では一切の責任を負いかねます。 |